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{a_n}の第n項のn乗根がある値に収束するとき隣り合った項の比も同じ値に収束するか

背景

微分積分学においてべき級数の収束半径というものがありますが、この求め方として次の二つがあります。

  • (係数比判定法) $\lim_{n \to \infty} |\frac{a_{n+1}}{a_n}| = l$ が存在すればべき級数$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$の収束半径$\rho$は$\rho = 1/l$である
  • (コーシー・アダマールの公式) べき級数$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$の収束半径$\rho$は常に$1/\rho = \limsup_{n \to \infty} \sqrt[n]{|a_n|}$で与えられる

また、これに関連して、次が成立します。

$a_n \ge 0, \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = l$ ならば $\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = l$

問題

では逆に次は成立するのか、気になるのは当然のことです。

(1) $a_n \ge 0, \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = l$ ならば $\lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = l$

これについて考えます。

$a_n \ge 0$で $$ \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = l $$ と仮定します。 このとき、両辺の対数を取ると $$ \lim_{n \to \infty} \frac{\log a_n}{n} = \log l $$ となります。 $b_n = \log a_n$, $k = \log l$とおきます。すると上の等式は $$ \lim_{n \to \infty} \frac{b_n}{n} = k $$ と書き換わります。

今考えているのは $$ \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = l $$ が成り立つかどうかですが、これは両辺の対数を取ることにより次と同値です。 $$ \lim_{n \to \infty} (\log a_{n+1} - \log a_n) = \log l $$ すなわち $$ \lim_{n \to \infty} (b_{n+1} - b_n) = k $$ です。 したがって、(1)は次の(2)に帰着されました。

(2) $\lim_{n \to \infty} \frac{b_n}{n} = k$ ならば $\lim_{n \to \infty} (b_{n+1} - b_n) = k$

では(2)が成り立つか考えましょう。 $\lim_{n \to \infty} \frac{b_n}{n} = k$ より、$\frac{b_n}{n} = k + c_n$とおくと、$c_n \to 0 (n \to \infty)$ です。 今考えていることは $$ \lim_{n \to \infty} (b_{n+1} - b_n) = k $$ が成り立つかどうかですが、これを$c_n$を使って書き換えると $$ \lim_{n \to \infty} [\{(n+1)k + (n+1)c_{n+1}\} - (nk - nc_n)] = k $$ です。$c_n \to 0 (n \to \infty)$であることに注意して書き直すと $$ \lim_{n \to \infty} n(c_{n+1} - c_n) = 0 $$ です。

したがって(2)は次の(3)に帰着されました。

(3) $\lim_{n \to \infty} c_n = 0$ ならば $\lim_{n \to \infty} n(c_{n+1} - c_n) = 0$

$d_n = c_{n+1} - c_n$とおくと、$c_n = c_0 + \sum_{i=0}^{n-1} d_i$です。 (3)の前件において$= 0$は重要ではなく、$c_n$が収束するという条件に置き換えてもかまいません。よって(3)は次の(4)と同値です。

(4) $\sum_{n = 1}^\infty d_n$ が収束するならば $\lim_{n \to \infty} nd_n = 0$

この(4)にはすぐ反例が見つかります。 $$ d_n = \frac{(-1)^{n-1}}{n} $$ です。 実際、無限級数 $$ \sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n-1}}{n} = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \frac{1}{5} \cdots $$ は$\log 2$に収束することが知られています。

さて、振り返ってみましょう。我々は問題を次のように変形していきました。

  • (1) $a_n \ge 0, \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = l$ ならば $\lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = l$
  • (2) $\lim_{n \to \infty} \frac{b_n}{n} = k$ ならば $\lim_{n \to \infty} (b_{n+1} - b_n) = k$
  • (3) $\lim_{n \to \infty} c_n = 0$ ならば $\lim_{n \to \infty} n(c_{n+1} - c_n) = 0$
  • (4) $\sum_{n = 1}^\infty d_n$ が収束するならば $\lim_{n \to \infty} nd_n = 0$

(4)に反例が見つかったので、結局(1)から(4)のどれもが成立しないことがわかりました。

(4)の反例$d_n = \frac{(-1)^{n-1}}{n}$より、議論を逆向きにたどって(1)の反例を構成すると次のようになります。

$$ a_n = e^{n (1 + \sum_{k=1}^n \frac{(-1)^{k -1}}{k} - \log 2)} $$

これが本当に反例になっているのか確認しておきましょう。まず、

$$ \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = \lim_{n \to \infty} e^{1 + \sum_{k=1}^n \frac{(-1)^{k -1}}{k} - \log 2} = e $$ より$\sqrt[n]{a_n}$は$n \to \infty$で$e$に収束します。次に、 $$ \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = e^{(-1)^n} $$ より、$\frac{a_{n+1}}{a_n}$は$n \to \infty$で発散します。確かに(1)は成立しません。

答え

(1) $a_n \ge 0, \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a_n} = l$ ならば $\lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = l$

これは成立しない。