整数係数多項式を使って書けるの方程式
をディオファントス方程式という。
ディオファントス方程式の例は とか などがあげられる。
さて、ディオファントス方程式が整数解を持つならば、当然それをで射影すればの解が得られる。 逆に任意の正整数についての解をもつならば整数解を持つだろうか?
これの答えはNoである。ディオファントス方程式であって任意の正整数についての解をもつが、整数解を持たないものが存在する。
これの証明がいろいろあり、面白かったので紹介する。
解答1
が反例。
これは上に解を持たないが、と任意のに解を持つ3次形式として知られている。しかしその証明はあまり簡単ではないようだ。
解答2
が反例。
まず、整数解を持たないのは明らか(任意の整数について左辺は以上なので)。 一方で任意のについて4平方和定理よりとなるが存在する。よって両辺をとって方程式の解を得る。
解答3
が反例。
まず整数解を持たないのは、この実数解がで有理数でないことからわかる。
次に任意の素数についてで解を持つこと。 これは平方剰余の理論からわかる。
がでもでもないとき。ルジャンドル記号の性質
よりとがともに平方非剰余なら34が平方剰余となる。 よってのどれか一つは平方剰余なのでは解を持つ。
の場合はが解。 の場合は方程式はとなるが、これは第二補充法則よりなので解あり。
次に任意の素数べきについてで解を持つこと。 これはヘンゼルの定理よりわかる。 ただし、のときはの微分がとなってしまうので、がの解であるところから始めなければいけない。
最後に一般のについては中国剰余定理からの解の存在が分かる。
解答4
が反例。
整数解を持たないことはよりとならないといけないことからわかる。
有理数解としてがあるので以外の素数べきの法について解が得られる。 また、も解なので以外の素数べきの法についても解が得られる。 したがって任意の素数べきの法について解が得られるので中国剰余定理より任意のについての解が得られる。
解答5 (基礎論的解答)
は計算可能でない集合であることが知られている(MRDP定理)。 は明らかになため、でない。
一方で、任意のディオファントス方程式について整数解を持つこととすべてのに対して解を持つことが同値だったら
とがで書けてしまう。矛盾。
この解答だとMRDP定理という大道具を使うし、具体的な方程式が与えられない。
参考文献
- nt.number theory - Diophantine equation with no integer solutions, but with solutions modulo every integer - MathOverflow
- y., Hilbert の第 10 問題 http://iso.2022.jp/math/undecidable-problems/files/hilberts-tenth-problem.pdf
- 雪江明彦 『整数論1 初等整数論からp進数へ』 日本評論社
上にも述べたが解答5以外は[1]によるものである。 MRDP定理については[2]を参照せよ。 平方剰余の理論やヘンゼルの補題は[3]を参照。