週刊 MAのモデルを作る #04 ZFCの公理の強制・前編
前回は論理公理がすべて強制されることを示した.今回はZFCの公理が強制されることを示そう.
ただし,長くなるのでZFCの公理の強制は2回に分ける.
外延性・分離・対集合・和集合・冪集合公理を今回扱い,無限・置換・選択・整礎性公理は次回扱う.
以下,半順序集合を固定する.
命題1
外延性公理はで強制される.
すなわち
である.
証明.
をとる.
を仮定する.
このとき
を示す.
と
を任意にとる.
このとき
なので仮定より
.
これで
の定義の条件の前半は示せた.後半も同様.
□
命題2
分離公理はそれぞれで強制される.
すなわち各論理式
について,
である.
ただし
は有限個の変数の並び
の略記である.
証明.
をとる.
とおく.
をとる.
とすると
と
がとれて
.
と
の定義より,
.
よって等号公理より
.
これで
が言えた.
逆にとする.
より
と
がとれて
.
すると等号公理より
であり,また
.
よって
の定義より
.よって等号公理より
.
これで
が言えた.
□
命題3
対集合公理はで強制される.
すなわち
である.
証明.
をとる.
とおく.
このとき,
に注意する.
をとる.
とする.
このとき
をとって
または
とできる.
なら
なので等号公理より
.
のときも同様.
□
命題4
和集合公理はで強制される.
すなわち
である.
証明.
をとる.
とおく.
とおく.
とする.
すると
と
があって,
.
の定義より,
と
があって
.
だから等号公理より
であり,この定義より
と
があって
.
このとき
の定義より
.
よって等号公理より
.
□
イメージは上の通り.の子供の子供となりうるすべての元を集めてそれらおのおのを確率
で持つような名称
を構成した.
命題5
冪集合公理はで強制される.
すなわち
である.
証明.
をとる.
とおく.
をとり,
とする.
とおく.
の定義より
である.
ここで,を示す.
は
の定義より明らか.
,
を任意にとる.
このとき
より
.
すると
と
をとって
とできる.
すると等号公理より
.
このとき
の定義より
である.
よって,
なので等号公理より
である.
以上で
が示された.
したがって,より
.
□
イメージは上の通り.の部分集合になりえる集合の名称たちを全部考えてそれら各々を確率
で子に持つ名称
を構成したのである.
参考文献
- K. Kunen (2011) "Set Theory" College Publications
- 塩谷 真弘 (2019) 情報数学概論I(01BB007) 講義資料