前回は論理公理がすべて強制されることを示した.今回はZFCの公理が強制されることを示そう. ただし,長くなるのでZFCの公理の強制は2回に分ける. 外延性・分離・対集合・和集合・冪集合公理を今回扱い,無限・置換・選択・整礎性公理は次回扱う. 以下,半順序集合を固定する.
命題1
外延性公理はで強制される.
すなわちである.
証明. をとる. を仮定する. このときを示す. とを任意にとる. このときなので仮定より. これでの定義の条件の前半は示せた.後半も同様. □
命題2
分離公理はそれぞれで強制される.
すなわち各論理式について,である.
ただしは有限個の変数の並びの略記である.
証明. をとる.
とおく. をとる.
とするととがとれて. との定義より,. よって等号公理より. これでが言えた.
逆にとする.よりとがとれて. すると等号公理よりであり,また. よっての定義より.よって等号公理より. これでが言えた. □
命題3
対集合公理はで強制される.
すなわちである.
証明. をとる.
とおく. このとき, に注意する. をとる. とする. このときをとってまたはとできる. ならなので等号公理より. のときも同様. □
命題4
和集合公理はで強制される.
すなわちである.
証明. をとる.
とおく. とおく. とする. するととがあって,. の定義より,とがあって. だから等号公理よりであり,この定義よりとがあって. このときの定義より. よって等号公理より. □
イメージは上の通り.の子供の子供となりうるすべての元を集めてそれらおのおのを確率で持つような名称を構成した.
命題5
冪集合公理はで強制される.
すなわちである.
証明. をとる.
とおく. をとり,とする.
とおく. の定義よりである.
ここで,を示す. はの定義より明らか.
, を任意にとる. このときより. するととをとってとできる. すると等号公理より. このときの定義よりである. よって,なので等号公理よりである. 以上でが示された.
したがって,より. □
イメージは上の通り.の部分集合になりえる集合の名称たちを全部考えてそれら各々を確率で子に持つ名称を構成したのである.
参考文献
- K. Kunen (2011) "Set Theory" College Publications
- 塩谷 真弘 (2019) 情報数学概論I(01BB007) 講義資料